犬にしてくれ。っていうか猫にしてくれ、

音楽なしで文章を書くのは初めてかも。ってそれは嘘かも。

 

 

「24時には帰ろうね」って口約束。

23時10分着の電車で帰ってくる私を待ってくれてた。

駅からの帰り道「遠回りして帰ろう」って私は言った。

別に長く一緒にいたいからそう言ったわけではなかったのに、あえてそう聞こえるように言った。

たった一回来ただけなのに当たり前みたいになってる公園でお互い少し離れた椅子に座った。

 

モルモットの鳴き声の話とか、よく見かけるホームレスの話とか、今日見た映画の話とかをした。

隣のコンビニで殴り合う外国人を遠くから見た。

時々沈黙になると私の方をじっと見つめてくるの、ずっと気付いてたけど気づかないフリをした。

 

明日も仕事だしもう帰ろうかって私が言って、公園を出たのは結局1時過ぎ。

遅くまでごめんねって謝る私に「何がごめんねなの」ってとぼけた彼は途中で出会った野良猫相手に15分は遊んでた。

たしかに何がごめんねなんだろうと思わせてくれた。

 

もう人生ですることないと思ってた自転車の二人乗り。高校生に戻った気分。

久々に浴びる風がほんとうに心地良くて、自分の人生にもこんな楽しい瞬間がまだ残ってたんだなんて、馬鹿みたいでありきたりだけど本気で思った。

背中から香水の香りがして切なくなって、曲がり角で怖いって言いながらそっと背中に触れたのはわざとだった。

人に触れたいなんて思ったの初めてかもってちょっと怖くなった。

 

 

 

全部嘘なら良いのにな。

嘘だけど。

 

また会おうね

初めて会った男の子に「意外と笑うんだね」って言われた

「笑わない女の子のが好きだった?」って返した

首を振って「ちょっと安心した」って言ってた

先週違う男の子に「笑顔が可愛い」って言われたばっかりだった

笑ってないと可愛くないんだって思った

 

初めて会った男の子が育った街を2人で歩いた

小学校、公園、グラウンド、池、神社

自分1人だったら人生で一度も来ることはなかったんだろうなって思った

彼はコンクリートの真ん中に這っているみみずを危ないからと木の枝で土まで連れて行ってあげてた

自分と同じくらい変わった人だなと思ったから

変な形の水たまりを見つけた時教えてあげた

ちゃんと驚いて面白がってくれた

 

「毎年10月に大きなお祭りがあるんだよ」

「え〜行ってみたいな」

「でも今年はお祭りやらないね」

「あ〜そっか、残念」

 

今年でよかったって思った

 

彼は私に「可愛い」とか見た目のことを何も言わなかった

何も言わないことは「可愛いね」って言われる時の3倍嬉しかった

帰り際に名前を聞かれて答えた

自分の名前が大好きだからいつもなら教えない

空中に描いて漢字まで教えた

いつか呼んでくれたらなんて思わないけど

いつか同じ名前の女の子に出会ったときにでも

私のことを思い出したらいいなと思った

 

夏の真夜中の散歩は結構暑くてあんまり良くなかったけど

いつもの毎日から遠く離れたところに行けた気がして夜は薬もお酒もなくてもよく眠れた

 

ぜんぶうそだけど

 

恋愛映画の主役の女の子になれたらなとか

好きなバンドの男性ボーカルが歌う歌詞の「君」になれたらなとか

ていうか自分じゃなければ何でもいいのかもなとか

「ずっと君が好きだから」なんて歌ってもらえたら

この憂鬱な気持ちも少しは良くなるのかなとか

優しい男の子と夏の夜に散歩でもしたら

死にたい気持ちもマシになるのかなとか

 

 

1月8日

 

一年が終わってまた始まって 何でもない毎日がまた始まって 始まったっていうより戻ってきて もう少しで冬は終わる気がするのに 雪はまだ降ってないのが変だなって思う 冬はこれからだって知らないおじいちゃんが言ってた

 

もう少しで20歳が終わるから 一年前のこと思い出してた 19歳だった 

 

そういえばこの前18歳の女の子と話す機会があって 私が18歳の頃周りにいた大人たちにいつも「他の子と違うよね」「18歳とは思えないよね」って言われていたのを思い出した あの時はよく意味がわからなくて 今になってやっと分かった気がした  よく言えば落ち着いていたのかもしれないけど 何の期待もしていない諦めを覚えた18歳だった だけど人一倍 大人になりたくないと強く思ってた気がする

 

それで19歳の私 自分に対して良くしてくれた人には感謝をお礼を 服従をしなければいけないと思ってた たとえ求めていない愛だったとしても 受け入れることが義務だと思った 好きだよと言ってくれる人に「早く嫌いになって下さい」ってお願いしてた 捻くれてたわけじゃなくて本心で 嫌いになってもらえるまでは離れたらいけないって宗教だった それは今でもまだちょっとある 愛情は呪いだって思う

 

20歳は自分が愛をあげるんだって決めて 求めてない愛からは逃げて逃げて逃げて それも少し辛かった 今もそう 無い物ねだりだから 

 

 

 

 

今日も1月8日だった

22歳あと数日で23歳になる

 

ちょうどぴったり2年 今この文章を読み返したのは偶然だけど 神様がポイって投げてくれたような気がする こんな時だけ信じるのごめんねって思う クリスマスにケーキを食べるのも元旦に初詣に行くのもおんなじ そんな時だけ信じてる

 

公開日は誕生日

もしも人生が1つの映画だったとして この映画の原作の中にもともとあったはずの役が1つ無くなった

原作ではすごく重要な役だったはずなのに いつのまにか映画には登場しなくなってた

でもきっとその映画はすごく出来が良くて 熱狂的な原作ファンですら文句を言うのを忘れてしまうくらいに素敵な映画になる

だからいつの間にか消えてたその役に誰も気がつくことは無くてまるで全てが当たり前みたいに物語が流れてく

その映画は本当に評判が良くてあの子もあの子も「私もう3回観たの」なんて得意げに言う

土曜の昼間のテレビの中では監督と主役の女の子がインタビューを受けたりしちゃって 続編も撮るらしいよなんて噂が大学生の間で流れたりしちゃう

だから何の問題もなんだけどね

たくさんの登場人物の中でたった1人いなくなったって何も問題は無い

それでも私は原作を読んでたから

その本はもうずっと昔から何回も何回も読んでいつも大切に本棚の奥のほうにしまってたから

お気に入りのブックカバーをかぶせてお気に入りのしおりを挟んでずっとずっと大切に

そんな大好きな本の大好きな物語の中のお気に入りの君がいなくなった

 

 

君の言う「俺ら」って言葉が大好きだった

まるで2人は1セットだと言われたみたいで心地よかった 同じ本の中に居るんだと思えた

 

だけど私の物語の中からは居なくなって 君はたぶん新しい物語の中に今ごろ居るんだろうな

新しい物語の中ではきっと私とは違う女の子が主役でその物語もきっとすごくすごく面白くて その物語には君は絶対絶対欠かせない 大切な役をもらえるんだろうな 映画化されてもエンドロールで君と誰かの幸せそうな生活が流れて 君の名前が2番目に流れて 舞台挨拶なんかで忙しくなるよ 

 

わけがわからないでしょ こんな話は

 

夕焼けが綺麗とか綺麗じゃないとか

友達が書いているブログをこっそり私に教えてくれた 少し読んで何故か泣いちゃって 読むのをやめた 「このブログ教えたの 8人目だ」って言われて 少しがっかりして 安心もした 並んでる言葉はどれも整っていて抱えてる感情が人間らしくて綺麗だった 凄く良い とか 分かる とか なんかそういうことなんだけどそういう言葉で伝えるのは違う気がして まだ何も言えてないしこの先も何も言えないと思う 2つか3つ年が上なだけなのにすごく大人みたいだなあって感じで いつも私のつまらない話を真剣に聞いてくれる そんなあの子も夜は泣いちゃうって書いてあって嬉しくなった 人と同じ感情が怖いとか 共感が怖いとか言っておきながら 同じところを見つけると喜ぶから私はやっぱり頭が変 

 

夕焼けが好きで 見つけるたびに写真を撮りたい 出来ることならその写真を誰かに見せたい でも私の撮った夕焼けの写真を見て綺麗だねって言ってくれる人はあんまりいない気がするから カメラロールにオレンジが増えるだけ 私の写真が下手とかそういうことじゃなくて 夕焼けとか月とかが綺麗だねって言って そうだねって返してくれる人はきっとすごくすごく優しい人で あと私のことを少しだけ好きな人だと思う 私が「綺麗だね」って言ってしまうことで それはもうただの景色じゃなくなっちゃう 私の抱いた「綺麗」って感情は単純で素直で本物だけど それを「あの人に伝えよう」って思った時点で 人に対する気持ちが混ざってしまう そしてそれを伝えられた側も純粋に夕焼けの綺麗さを見ることは絶対に出来なくて もしその人が私のことを嫌いだとしたら 私から伝わってきた夕焼けは綺麗に見えない その逆も そう

 

また人身事故で電車が止まった 最近は週に一度誰か死ぬ 目に見えるのが週に一度なだけで 毎分毎秒何処かで誰かは死んでるって小学生の頃本で読んだ 人で溢れた駅のホームで知らないおじさんが「春だからねえ」と言っていた 季節をそんなことで感じたくない それにまだ春ではない 死にたいと思ってる人は春じゃなくても思ってる 春も夏も秋も冬も苦しい 

 

月が綺麗って言おうと思って 連絡を待って でも言うのを忘れて電話を切った わざわざメッセージを送るのは違うかな とか考えてる時点で違う もっと 呟くみたいに気持ちを言いたい ああ綺麗だなと思った瞬間に口にしたい 

 

お腹が痛いって言っただけで「ストレスだよ」って言われる 金魚が可愛いって言っただけで「メンヘラみたい」って言われる ひらがなを使っただけで「自分のこと可愛いんだね」って言われる 全然意味がわからない 私は毎日 エスカレーターの階段と手すりの速度のこととか 1年を12個に分けた理由とか 12個で1年にまとめた理由とかを考えてて スクリーンの中で観音崎くんはハルナのどこが好き?って質問に「あいつ病んだりしないし」って答えてたこと 多分あと一ヶ月は忘れられない でも一ヶ月したら忘れる 病まない女の子はモテるって 知ってた?

 

哀しみは山手線だったかも

 新宿は嫌い 渋谷も池袋も嫌い 小学生の時に初めて行ったその日からいつもずっとそう思ってた 高校生になって好きになったバンドのボーカルが舞台の上で「渋谷が嫌い 東京が嫌い」って叫んでた あんまり好きになれなかった映画の主人公の女の子も「東京が嫌い 渋谷が嫌い」って言ってた 私は「嫌い」を言えなくなった 共感が怖い 誰かと嫌いなものを共有するのが怖い 分からないけど 理由とかは分からないけど 嫌いなのは私だけで良くて みんなが嫌いになったら可哀想 みんなが嫌うなら私くらいは好きで居てあげなきゃ行けない気がする 嫌いだったはずの新宿に私は毎日居る 毎月毎週毎日毎日 もう何年も居る 居場所だとは思わない 私が居なくなってもすぐに違う誰かがそこに居るんだろうな あの子の隣もあの人の隣も全部全部そう 

 

今日は帰りの道でカップルがキスをしてた バレンタインのチョコが入った紙袋を持った男の子が居た 電車の中では手を繋いでた 女の子が「愛されたい」って肩を落としていて 横にいた子が「愛されたいって何?車でみなとみらいとか連れて行ってもらうこと?」って聞いてた 私は昨日恋人に「私はディズニーランドも動物園もいちご狩りも行きたくないよ」って言った  もしかしてちゃんと伝わってなかったかもしれないって女の子たちの会話を聞いて思った 

 

外国では洋服を縫う仕事をする女の人たちが工場の瓦礫に埋もれて何百人も死んでるって聞いて 洋服を買えなくなった 貧しい国に洋服を寄付しようって 寄付された服が溢れてゴミみたいになってるって聞いて 生きているのが嫌だと思った どうにもならない気持ちがたくさんある 分かって欲しいわけでも誰かに教えたいわけでもないけど 積もって積もって何処にも消化できずに埋れてく 自分の心の中とかお腹の中とか きっとしっぽみたいに後ろにもついてきて だけどきっとまた忘れて洋服を買うし 今も明日も明後日も私は息をして どうせ生きるなら楽しい方がいいとか そういうのぜんぶ宗教だと思う 別に宗教が悪いものじゃない でも人に押し付けたらそれはもう信仰じゃないと思う 共有するのが怖い みんなもっと怖くなってくれたらいいのに 自分と同じ思考の人がいることにもっと恐怖心を抱いてくれたらいいのに 分かり合えないことが当たり前って世界になればいいのに

哀しみは地下鉄なんかじゃなくて

まだ2月 みんなはもう2月って言う

お財布の中には2110円 昨日は駅の薬局で300円のマニキュアをクレジットカードで買った コートのポケットには腕時計 20歳の誕生日にそのとき付き合っていた人からもらった もらって2日で別れた 腕時計は毎日つけてる 今朝も玄関で忘れたことを思い出して 洗面所に置きっぱなしの腕時計を取りに戻った そのままポケットに入れてあとで電車の中でつけるんだ思う 腕時計をくれた人がくれた言葉はたまに思い出す あの人が私に告白した交差点は今でも毎日通るし 私があの人を捨てた高架下も毎日通ってる たぶんあの人は2度と通らないんだろうな 私があげたパスケースまだ使ってるのかな あれ実はパスケースじゃなくて名刺入れだったって結局言えなかった 私が彼に言えなかったことはそれくらい 思い残すことが何もないから こんな風に思い出したりできる 駅の電光掲示板には何も映っていなくて変な感じがした 毎日誰かが死んだりするたびに電車が何分遅れてるか映してくれるのに 今日は誰も死んでないのかな 変な感じ 人は死ぬのが当たり前だと思う 新宿のマンションで火事があって50代のおじさんが死んだってニュースを今朝テレビで見た これって沖縄でも放送してるのかな なんて考えた 私が死んでもニュースにはならないだろうな 腕時計をくれたあの人は私が死んだことをいつ知るのかな 私は死んだその日もあの腕時計をしていて だけどあの人がそれを知ることはきっと無いんだろうな 今日が雨なら良かったのにと思うことがすごくよくある 映画を観ているときに駄目出しをするみたいに 今日という日の演出に駄目出しをしてる だけど見直すべきなのは演出よりも脚本で 主役の女の子は変えた方がいいと思う いきなり主役が変わったりしたら みんなどんな顔をするのかな   探してくれたりするのかな しないだろうね 「ねえあの主役の女の子死んじゃったらしいよ」「え〜!そうなんだ」終わりだろうな