またね、は無いよ。

始まらなければ終わりもないって思ってたよ。

 

君が飲んでたミルクティー、あの自販機、あの公園、あのブランコ。会ったことないけど君が飼ってた猫、あの夜撫でた野良猫。初めて会った川沿いの道、手を振った交差点。セミの抜け殻、ビニール傘、自転車の荷台、変な柄のTシャツ、懐かしい匂い、毎朝送られてくるおはよう、階段で上がるラブホテル。

全部わたしだけの物にしておきたいな。過ぎた時間は戻らないから、もう消えることはないって思うと嬉しいな。

 

どっちが悪かったのかよくわかんない。たぶんどっちも悪かったよね。2人とも同じくらい最悪で最低だったね。この関係が終わるときにはもう少し君のこと嫌いになれると思ってたけど、全然なれなかったよ。君はどうだった?なんて聞けないし聞かないけど、でもどうだった?

君のおかげで夜はよく眠れるようになりました。君のおかげで散歩が好きになりました。君のおかげで孤独で死にたくなる夜から少しの間離れられました。

また眠れなくなるだろうな、また死にたくなるだろうな。でも大丈夫です。大丈夫だった夜のことを覚えてるから。

わたしからさよならって言えばさよならって返ってくるのはわかってて、だから君を好きになったんだったと思う。

ごめんねとかふざけんなとか、悲しいとか悔しいとかそういうの無くて、ありがとうしかなかったよ。だから忘れたいとも思わないんだよ。大事に大事に、胸の1番奥深いところにしまっておきたい、そんな恋。恋だったんだよねたぶん。恋だったってことにしたいな。

 

恋の終わりってこんなだったかな。

 

夏の終わりって、こんな急に寒くなるんだっけな。

 

ねえわたしたち家が近いから、またどこかですれ違っちゃうかもね。でもちゃんと気づかないフリをするよ。

あの交差点、まだしばらくは君の背中を探しちゃうと思うけど、もう少し寒くなったら、コートを着る季節にでもなったら、きっともう君のことは忘れてるよ。コートを着た君のことは知らないし。君は夏に置いていくから。

 

たくさん嘘ついたけど、ありがとうってこれはほんとに思ってるよ。

バイバイ。

またねは無いよ。

 

 

思ったよりも短かった、文も恋も。

 

全部作り話です。