左手の甲に痣がある 小指の下のあたりに濃いピンク色で2センチくらいの丸いの

 

朝のわたしは電車に乗っていて 人が多かったのと眠くてぼーっとしていたのとで 隣のおじさんにぶつかっちゃって 「おい」って怒られた 怒られたなんて酷い被害妄想で軽く注意されただけ それだけで目の前が真っ白で頭の中は煩くて 駅についてトイレに駆け込んだ 本当に文字の通りに涙が「ぽろぽろ」出てきて ああ私は本当に本当に気持ちが悪い人間だなと だけどそれはいつも通りだから不思議なことじゃなくて 数分で何で泣いていたのか分からなくなってお化粧直して外に出た

 

夜のわたしは彼の横で眠りたいのに眠れなくて また涙がぽろぽろしてて なんだかそのまま朝になる気がした 彼のこと起こしたら絶対に嫌われるって分かってたから早く終われ早く居なくなれって自分で自分の手を強く握った 23が0になっても涙が止まらなくて ストーブのまえでしゃがんでみたり携帯で好きなお笑い見たりしたらどんどん苦しくなって 彼の背中を何回も何回も叩いた 不機嫌な「なに?」に余計に苦しくなって 助けてって言えなくて言えなくてとにかく死ぬんだと思って 彼は面倒くさそうに私のこと無理やり抱き寄せてきて そのあとも止まらなくて 0が1になって 手も足も顔も痺れてわけがわからなくて 彼がため息つきながら電気をつけて「外行こ」って言われて 確かあの時何故か ああわたし捨てられるのかな とか思って嫌だって泣き喚いた 「大丈夫 俺も分かるから」って言われた気がする  

 

外寒くて寒くて人は誰も居なくて 私の汚い呼吸の音だけが響いていて 寒くて震えも止まらなくて だけど背中をさする彼の手は震えてなくて この人とはもう一緒に居られないのかもと思った 部屋に戻ってストーブの前に座らされて 彼はまた布団に横になってて「起きてるから」って言って目を閉じていてごめんねって謝ったら「さっき一緒におすすめの動画見てくれたからいいよ」とか「動物園連れてってくれたからいいよ」とか言ってくれて またちょっと泣いた

 

ぐちゃぐちゃの記憶 こんなふうに文字にしたら整って見えるけどめちゃくちゃな夜だった 私は私のことがとっくに嫌いだし気持ち悪いけど 彼には好きで居て欲しかった 無茶な話  みんなどうやって生きてるのか分からない 普通に居たい せめて隠したい 普通なフリが出来るようになりたい 頭がおかしいんだと思う このまま彼と会えなくなったらどうしよう だけど会いたくないとも思う 誰かの前であんな風になったことは無かったのにぐちゃぐちゃの私を見られて本当に終わったと思った

 

覚えのない手の痣は消えないで欲しいなと思う

消えても私は許されないから 消えないで欲しい 私1人を取り残さないで勝手に無かったことにしないでもっともっと痛くなればいい 押し潰されそうなんて意味がわからなくて押し潰されればいいよ死ぬ程に  これから先強くなれるかな

なれないんだろうな 

好きな季節の話

1年の中でいちばん嫌いな季節っていつ?誰かに聞きたくていつも聞けない 好きな季節を聞かなきゃいけないって法律でもある気がして怖い 

いちばん嫌いなのは冬 寒くてキラキラしててあったかいのがすごく嫌い すごく冷たい空気なのに電車はあったかくてみんな楽しそう 赤が緑が色が街に溢れて溢れて溢れ出したように見えてむしろ汚いくらいに電球がLEDが光ってる いつもはただ存在してるだけの木とかそういうのがみんなに見られてて木にすらも負けなきゃいけない季節になる いくら電球を纏ったって見てはもらえないそのまま焦げて死ぬことすら出来ない 寒い寒いって言いながら手を繋ぐ帰り道とか車の中から見えたツリーに騒いだりとか誰かの為に買うケーキとか 全部知らない

 

好きだと思いたかった好きになれたら幸せにしてもらえる気がして全部が受け身で自分の感情とかどうでもよくてだけどかわいいかわいいかわいくてたまらない自分の為に そんな自分を幸せにする為に好きでもない嫌いな人を好きなふりをする

一年で一番大切で尊いらしいその日に 行ったこともない街に連れていかれて 昔ドラマの中で見てた憧れの街は全然大したことがなくて何一つ輝いてなんかない ありふれた愛がそこらじゅうに落っこちていて何の価値もない夜 飲みたくもない美味しくないお酒を乾杯して一口だけ飲んだ テーブルの上に置かれていた少し変わった形のキャンドルくらいしか覚えてない 雑誌に載っていた大きなツリーも全然綺麗じゃなくてその周りに居る人達なんてもっと綺麗じゃなくて そんな風にしか景色を見ることが出来ない自分が一番汚かった この人とは というか人とはもう離れた方がいいなと思った そんな尊い夜に息をするなんて自分には似合ってない

 

この人と一緒に居ようと思ったきっかけは 好きだよなんて言葉じゃなくて 君のことを嫌いになることなんて無いよって言葉で 自分を好きだと言ってくれる人を目の前に でもいつかは嫌いになるでしょうと睨む自分だったから それならいいやと思った かわいい自分の為に自分の気持ちなんて簡単に殺して愛されることだけを選んだ選んだ間違いなく選んだんだけどダメな人間で愛されることだけじゃ満足できなくなった ホテルのベッドで涙が止まらなくなった日があった 愛されることに飽きて苦しくて涙が止まらなくて そんな私を見て微笑みながら抱いたその人は 本当に私のことが好きだったし それを望んでいた筈の私は何処かにいなくなってた 彼の手はいつも冷たく感じてた

 

寒い日の雨の中で まるで犯罪者にでもなったような気持ちで 幸せそうな家族とか仕事終わりのおじさんたちが通り過ぎていくのを何回も何十回も見送って 待ちたくもない人を待ってコンビニで欲しくもないジュースとお菓子を買ってもらって テレビとベッドしか無い狭い牢屋のような部屋で浴槽もない冷たいシャワーを浴びて 涙を流しながら欲しくもない愛をもらう夜に死にたくなるような気持ち 誰にも分かってもらえないんだろうし分かってもらいたいなんてことすら考えたらいけない 

 

そんなのはもうずっと前の話で あの日の自分から見たら今日の私は憎たらしいくらい幸せでしょ 幸せって思いなよ ってそれまたあの時と同じじゃん

 

ぜんぶウソの話なんだけど