消費税って上がるんだっけ

晴れた土曜日、渋谷の端っこ。いつも通りの狭い浴槽。床に溢れた真っ白い泡。まだ冷めてない、熱いお湯。部屋から聞こえる、つけっぱなしのテレビの音。

今日もわたしの前にいるこの人は、間抜けな顔で寝息を立てて、浴槽の淵に置かれた右手が今にも泡の中に落ちてしまいそう。脚を揉む手を止めて「起きて」と頬に触れてみる。薄く開いた片目で「可愛いね」と囁いて、またすぐ眠りに落ちていく。よくある歌の歌詞、こんなに近くにいるのに遠くに感じるとかってやつ、こういうことだと納得した。見惚れるくらいかっこいいけど、寝顔はいつも間抜けだな、それほどわたしに興味がないってことだよな。

いつだってわたしの下手なマッサージを褒めてくれる。本当は違う。ダメ出しをしないのは期待をしていないからだと分かる。100円ショップで買った充電ケーブルなんてすぐ壊れる。だけど今必要だから、少しでいいから充電したい、110円なら良いかと買ってみる。壊れたら捨てればいいし、失くしても探さなくていいし、50%くらい充電できたら家まで持つし。でも買ってみたら不良品だったりするのかな、そしたらまた違うの買えばいいからさ、とりあえず今はこれで済ませよう。そんな程度のわたしです。

きっとわたしがうっかり人を殺しても、彼は怒ったりしないと思う。いつもみたいに、薄く開いた片目で見るの。そっか、そうだね、愛と無関心って、意外と似てると気がついた。わたしは大丈夫です、似たようなものなら別に、どちらでも。

 

たった数日前の出来事を、あんまりはっきり覚えてなくて、なんだかちょっと怖いんです。いつだって全部作り話なんだけど、夢で見た話くらいにぼやけてる。