また会おうね

初めて会った男の子に「意外と笑うんだね」って言われた

「笑わない女の子のが好きだった?」って返した

首を振って「ちょっと安心した」って言ってた

先週違う男の子に「笑顔が可愛い」って言われたばっかりだった

笑ってないと可愛くないんだって思った

 

初めて会った男の子が育った街を2人で歩いた

小学校、公園、グラウンド、池、神社

自分1人だったら人生で一度も来ることはなかったんだろうなって思った

彼はコンクリートの真ん中に這っているみみずを危ないからと木の枝で土まで連れて行ってあげてた

自分と同じくらい変わった人だなと思ったから

変な形の水たまりを見つけた時教えてあげた

ちゃんと驚いて面白がってくれた

 

「毎年10月に大きなお祭りがあるんだよ」

「え〜行ってみたいな」

「でも今年はお祭りやらないね」

「あ〜そっか、残念」

 

今年でよかったって思った

 

彼は私に「可愛い」とか見た目のことを何も言わなかった

何も言わないことは「可愛いね」って言われる時の3倍嬉しかった

帰り際に名前を聞かれて答えた

自分の名前が大好きだからいつもなら教えない

空中に描いて漢字まで教えた

いつか呼んでくれたらなんて思わないけど

いつか同じ名前の女の子に出会ったときにでも

私のことを思い出したらいいなと思った

 

夏の真夜中の散歩は結構暑くてあんまり良くなかったけど

いつもの毎日から遠く離れたところに行けた気がして夜は薬もお酒もなくてもよく眠れた

 

ぜんぶうそだけど

 

恋愛映画の主役の女の子になれたらなとか

好きなバンドの男性ボーカルが歌う歌詞の「君」になれたらなとか

ていうか自分じゃなければ何でもいいのかもなとか

「ずっと君が好きだから」なんて歌ってもらえたら

この憂鬱な気持ちも少しは良くなるのかなとか

優しい男の子と夏の夜に散歩でもしたら

死にたい気持ちもマシになるのかなとか